理学療法!抗がん剤~免疫チェックポイント阻害薬~

こんにちわ、PT.syuです

 

今日はまじめに、理学療法に関わる内容のブログです

 

去年の7月に院内の勉強会でやった内容です

一応、教科書などを参考に作りましたが、新規内容更新されていたりする可能性もあるので参考までにお願いします

 

さて、ぼくは血液癌のリハビリをしています

その中で最近注目されている免疫チェックポイント阻害薬についてまとめたのでぜひご覧になっていただければ幸いです

 

それでは!どうぞ!!

 

 

 

【はじめに】

がんに対する治療は3大治療があり、それぞれ手術治療・放射線治療・薬物治療である。

薬物治療の中には化学療法(細胞障害性抗がん剤)、分子標的薬、内分泌療法(ホルモン療法)、免疫療法と分類される。

今回、近年多種多様な疾患に対して承認を受け今後の治療効果が期待されている免疫チェックポイント阻害薬について述べる。

 

 

【細胞障害性抗がん剤

 作用機序により様々に分類される。

 細胞のDNA合成や細胞分裂を阻害することで効果を発揮する。一方で、細胞分裂等の過程は腫瘍細胞に特異的でなく、正常細胞にも認められるため、腫瘍細胞への選択性が乏しい。そのため、骨髄抑制、粘膜障害、脱毛などの副作用が発現しやすい。

【分子標的治療薬】

 抗体製剤と低分子化合物に分類される。抗体製剤は抗原分子に結合し、その機能を阻害する。一方、低分子化合物は標的分子に結合して、シグナル伝達を阻害する。分子標的薬は細胞障害性抗ガン薬にくらべて、高い腫瘍選択制を有するため、正常細胞への毒性が少なく限定的な臓器で副作用が発現する。(インフュージョンリアクション)

 

【免疫療法】

 現状では「免疫療法」はさまざまな治療法を含んだ言葉であり、効果が証明されているかいないかに関わらず広く「免疫療法」と呼ばれている。

一般的に免疫機能は体内で発生しているがん細胞を免疫により異物として判別し、排除している。しかし、免疫が弱まった状態であったり、がん細胞が免疫に抑制をかけることで免疫が低下することにより、がん細胞を異物として排除しきれないことがあり、がんの発症や増殖に繋がる。免疫療法は、免疫本来の力を回復させてがんを治療する方法と言われている。

 

  • 免疫チェックポイント阻害薬

近年、がん薬物療法の適用拡大や新規薬剤の台頭により、患者の生存期間の延長が期待されている。その中で、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、2014年に日本でニボルマブ(オプジーボ)がはじめて承認され、その後も新規薬剤の承認が続き、今やがん薬物療法には欠かせない薬剤となった。また、承認当初の適応疾患はメラノーマのみであったが、現在、適用拡大に伴い、多くの診療科で免疫チェックポイント阻害薬が使用されるようになった。

・機序

活性化T細胞上に発現する受容体であるcytotoxoc T-lymphocyte antigen-4(CTLA-4)およびprogrammed cell death-1(PD-1)は、T細胞の活性化を抑制する免疫チェックポイント分子として知られている。免疫チェックポイント分子の働きによって、腫瘍細胞では免疫反応が抑制されており、がん細胞が増殖します。その動きT細胞の活性化を抑制する免疫チェックポイント分子を阻害することで、免疫を高め抗腫瘍効果がを発現させる。

他の治療と比べて、副作用の頻度は低いながらも致死的な副作用が生じる場合がある。投与を中止しても副作用が持続することがあり、長期的な観察が必要である。

 

 

 

 

 

 

 

 

・適応疾患、承認時期

 

 

・生存率

 元来ある化学療法などの治療に対して抵抗性や副作用により治療中断された方に対して投与されることが多い。その生存率に関してはまだ多くは明らかになっていないが、生存率の向上が見られている疾患が多い。米国がん学会ではstageⅣの肺癌患者の5年生存率が16%まで上昇したと報告がある(従来の治療では5年生存率5%以下)。

免疫チェックポイント阻害薬の特徴として、効果があった場合、他の抗がん剤の治療では生存率が下降していくが、テーブルプラトーといって生存率が下降せずにほぼ水平に伸び続けることも特徴である。

 

・副作用

 他の抗がん剤と比べて、副作用は少ないとは言われているものの、危篤な副作用が生じることもあるため注意が必要である。

インフュージョンリアクション

:頻度1-24.7%。投与後24時間以内に生じやすい。

 アレルギー症状に類似した症状が生じる(くしゃみ、咳、熱感、発熱、寒気、頭痛、発疹、嘔吐、掻痒感、顔面紅潮、口唇浮腫、咽頭不快感、息切れ、呼吸困難、血圧低下)

免疫関連有害事象(immune related adverse events:irAE):

 免疫機能が過剰に活性化され、自己免疫反応を引き起こすことで生じる副作用。皮膚、消化管、肝臓、肺、内分泌に比較的多く生じることが知られているが、全身のどこでも生じ、従来の細胞障害性抗がん剤や分子標的薬と比較して出現期間(1週間以内に発症するものから1年以上経過してから発症するものもある)にばらつきがあるため、長期間の注意が必要。

 特に生命危機となりうるものは、薬剤性肺疾患、劇症1型糖尿病、副腎皮質機能低下症があげられる。

 ・薬剤性肺疾患(間質性肺炎):頻度は1-13.9%

治療開始から肺疾患発症までの期間の中央値は40日、発現時期は4~246日。

・劇症1型糖尿病:頻度0.1-0.6%

 急に危篤化する糖尿病で、数日で膵ランゲルハンス島β細胞が破壊され、1週間前後で糖尿病ケトーシスまたはケトアシドーシスに陥る。発現時期は5-462日。

・副腎皮質機能低下症:

発現時期は1-数か月。頻度は0.2-4.9%。急速に進行していくため、倦怠感や食思不振、消化器症状が強い場合には副作用の可能性を考える。

甲状腺機能異常:

 頻度が高く、1-20%で生じる可能性がある。甲状腺機能低下・亢進どちらも生じることがあるが、低下の方が生じやすい。

【まとめ】

 免疫チェックポイント阻害薬は使用され始めて10年程度の経過となっており、有効性は示されているものの、まだ長期的な効果が判明しておらず今後の研究が期待されている治療である。

 当院でも、投与患者が増えており、リハを担当する機会も増えてきている。リハを担当して、やはり副作用が生じにくく、副作用によるリハ休み回数が少なく感じる。

 しかし、 投与後長期間経過してもirAEは生じるため、一度でも投与された人に対しては副作用(特に倦怠感)には注意していく必要がある。急速に進行するため、違和感を感じたら医師・看護師へ早く相談・報告することが重要である。

【参考文献】

・病気がみえる vol.5 血液

・各臓器がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の現状について造血器腫瘍 2019.3

胃がんとがん免疫療法のお薬「オプジーボ」について 小野薬品工業株式会社

・がん看護 免疫チェックポイント阻害薬 2020.5